~「クロスカルチャー」息づくロンドンの食文化=”THE CLAPHAM INN”の原点~

想像と違ったロンドン生活でしたが、結論から言うと、移民の街に身を投じたことは大正解でした。延べ2年間のロンドン暮らしのほとんどを、レイトンストーン、ベスナルグリーン、ホワイトチャペルなどといった、所謂「イーストエンド」で過ごしました。

 

今でこそ再開発が進み、ロンドンで一番ヒップな場所といわれているイーストエンドですが、元々は貧困層が集まる下町。テムズ川沿いの港湾施設などで働く労働者階級や、迫害から逃れるために移り住んだユダヤ人、カリブ海の島々、中東系などイギリスが植民地支配をしていたことある国々からの移民が職を求めて、このエリアで暮らしていました。

 

そんな街に変化が起こりだしたのは、ちょうど私が住んでいた頃あたりから。デザイナーやクリエイターがアトリエをこの地に移し始め、それに各国からの移民が持ち込んだミックスカルチャーと交わることで、街に独特の多様性あふれる「クロスカルチャー」が生まれました。

 

「クロスカルチャー」は、その後ガストロパブを営む私にも大きな影響を及ぼしました。

 

お金のない学生(のフリをしたその日暮らし)が中心部にある有名レストランなど行けるわけもなく、食事はほぼ自炊。そしてパブでビールを飲む日々でした。

 

一方、週末になると色々なところで行われるマーケットに出向き、世界各国のストリートフードを味わうのを何よりも楽しみにしていました。友人の家で行われたホームパーティーでは、集まった仲間がそれぞれの国の料理を持ち寄って、みんなで盛り上がりながら食べることが出来たのも良い思い出です。

 

住み始めて1年も経つとロンドンの地理にも詳しくなり、至るところにある移民街を訪れては、彼らが祖国から持ち込んだ料理を味わっていました。

 

勿論、フィッシュアンドチップスやコーニッシュパスティをテイクアウトでよく食べていましたし、パブや食堂などでイギリス料理に親しんではいましたが、滞在中はどちらかというと、ロンドンという街をフィルターに通した世界中の料理、即ち「クロスカルチャー」された料理を多く味わっていたと思います。その時の経験が、現在のスタイルに反映されていると自負しています。

 

イギリス料理や、移民が持ち込んだ料理をアレンジ。様々なビールやドリンクとともに、多民族都市・ロンドンの魅力を、料理を通じて味わえる「ガストロパブ」

 

そこには人種の垣根を越えた「人と人が行き交う中心点」「クロスカルチャー」「ジャンクション」という、私の人生観を表したこれらの言葉が、常に活かされ続けています。

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